いまを支える。未来へつなぐ

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狩野 綾子
INTERVIEW
狩野 綾子

家族が義肢を使うことになったことをきっかけに
中学校教師から心機一転この道に。
義肢の製作だけでなく、チューニングやフォローアップも大事に寄り添っている。

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人生の辛い時期に、気持ちに寄り添うサポートを
入社のきっかけは?

きっかけは、家族が交通事故で義足を使うようになったことでした。それまでは、中学校の教師をしていたので、反対の声もあるなかでの挑戦でした。そもそもものづくりに興味があったので、出来上がった義足の美しさに魅了されたのもはじまりです。そして何より車いすを使って生活していた家族が、自分の足で歩けるようになった感動を経験。手や足がなくなるという人生の一大事に寄り添える、やりがいのある仕事だと感じたのが転機でした。それから一念発起。義肢装具士養成校へ入学し、義肢装具士の資格を取って、今に至ります。

具体的な仕事は?

1本目の義肢は、医療の領域。2本目からの義肢は、福祉の領域と言われています。私自信は義肢装具のなかでも、1本目の製作に立ち会うことが多い現場にいます。ドラマなどでは、義肢をつけてリハビリすればすぐに動けるようなイメージで描かれることもあります。しかし、事故などによる手足の切断では、怪我のか所の状況が日々変わってきます。なので、なかなか自分にあう義肢にチューニングするのは難しいのが現状です。身体の状況を見ながらこまめなフォローアップも欠かせません。日常の生活に戻れるように、義肢をつけてのトレーニングのサポートも重要な仕事です。
もちろん、この時期は精神的にも計り知れないほどのダメージがあるとき。人生の一大事に、できるだけ気持ちに寄り添うことも大切な仕事です。常に、「気持ちを想像すること」を心がけています。

やりがいを感じることは?

大切な時期の人を、支える仕事はとてもやりがいがありますね。特に、家族が義肢を使っていることもあり、使い勝手など、よくわかる部分がある。義肢ユーザー初心者に、自らの経験からアドバイスをできるのも、少しは役に立てているのではないかと思っています。

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仕事の中で難しいと感じることは?

義肢を必要とする人の中には、高齢者の方が多くいらっしゃいます。若い方でも、義肢が身体に馴染むのには時間がかかります。全身状態が芳しくない高齢者の方が、そうしたなかで義肢に馴染み、トレーニングを続けていくのはとても困難な状況です。どうモチベーションをたもってもらうかは、いつも難しいことだと思っています。

有薗製作所の魅力は?

全国でも有数の規模を誇る有薗製作所は、やはりいろんなことができる可能性を秘めていると思います。例えば、素材ひとつとっても、木工、金属、樹脂など、幅広いジャンルを取り扱っています。今は義肢を中心としていますが、今後は、介助の方に寄り添う介護用ロボットなどの開発も可能ではないでしょうか?私が入社した頃は、どちらかというと職人の方が多い職場でしたが、最近は女性や若い人たちの活躍も増えてきています。いろんな人たちが、長く働くことのできる環境がより整っていくといいですね。

どんなことに挑戦していきたい?

個人的には、もっと視野を広げて仕事ができればと思っています。人がやったことのないようなことに挑戦していきたいですね。義肢は、もとの日常生活に戻れるように機能を取り戻すことをサポートするものです。義肢の製作を通して知り合った方々と一緒にイベントをしたり、ユーザーの方々の生活がより楽しくなるような取り組みを支援したい。そのためにも広い視野をもってアイデアを練っていきたい。そうなれば、きっと自分自身もとても前向きに仕事に楽しんで取り組めると思っています。

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