松本氏のNICEなオィッス!
●第5回 「玲ちゃん」

先頃、私の担当している営業先の病院で学術集会が行われました。学術集会は毎年この季節に行われ、先生方や病院スタッフの方々が日頃行っている研究や新しい試みなどを発表されます。その中で今回、呼吸機能を取り上げた発表があり、私が作っている臥位保持装置などに活かせればと興味を持ち出席して参りました。全般的には、直接、私の仕事に関係する発表は少なく、専門的な内容なので、私にはちょっと難しかったのですが、自分が椅子などを製作する上でかかわりのある知識の勉強になったと思います。来年も是非出席して、得たものを自分の仕事に活かしていきたいと思います。


写真@


写真A


写真B


写真C


写真D


写真E


写真F

今回は、ちょっと変わったフォームチェアーを紹介します。通常、フレームを組まずにスポンジのみで製作した椅子をティルトリクライニング(背もたれだけではなく、座った姿勢を保ったまま全体を傾けること)させる場合、ウェッジ(楔)状のスポンジなどを椅子本体の底に敷き角度をつけます。しかし、この方法では限られた角度までしか傾けることができません。そのため呼吸などが安定しない児に対しては、リクライニング(ティルト)角度が足らず、不適合となるケースがあります。そこに着目し、当社では写真@のような椅子の底を円くしたフォームチェアーを製作しています。底を円くすることにより背もたれの角度を床に対して90度からおよそ20度まで調節することができます。よって臥位に近い姿勢をとることができます。

玲ちゃんも呼吸が安定せず座位の確保が困難な児でした。初めて出会った1年半前の補装具の処方は、バギーとカーシートで、しかも側臥位(横向きに寝た様子)を保持するとともに、0〜30度のティルトの機能もつけてほしいと医師・セラピストより依頼がありました。側臥位を保持するバギーやカーシートの製作は初めての経験で、私としても、やりがいのある注文を受けたという印象が残っています。

製作は、玲ちゃんが在宅訪問で訓練を受けているため、ご自宅へセラピストと一緒に訪問して進めました。当初、製作には時間がかかると予想していましたが、本人の姿勢に関して、セラピストより的確な指示がありましたので、それほど時間をかけずに完成させることができました。写真A、Bがカーシートの完成品です。カーシートの構造は車に取り付けるフレームにティルト機構フレームを設け、支持部である側臥位のクッションを取り付けています。クッションのカバーはお母さんのご希望で、お母さんが購入された生地で製作しました。当社のカバーに使用しているレザーは病院などでよく見かけることから見飽きているのと、どうも無地のレザーしかないところが、受け入れていただけなかったようです。しかし、お母さんのご希望で、玲ちゃんのイメージにあったカーシートができ、私も満足しています。実は、お母さんの自慢(?)のバギーも紹介したかったのですが、写真がありませんでした。どちらかと言うとバギーの方がお母さんの趣味が強く出ていたので・・・残念です。因みにですが、当社の場合、キルティングであれば、キルティング代はお客様持ちになりますがカバーを製作しています。あわせて、洗い換えのカバーを製作することがありますが、その分は有償(工賃)となります。(詳しくは担当営業員までお願いします。)

フォームチェアーの話に戻りますが、小児科的治療が進み、呼吸が安定してきた玲ちゃんにフォームチェアーが処方され、仰臥位(従重力姿勢)から座位(抗重力姿勢)をとらせることになりました。呼吸が完全には安定しないことから、どれくらい起こしていけるものなのか、予測ができないために、場合によっては臥位に近い姿勢もとれるように、いすの角度調整を大きくしました。製作は自宅にてSpO2(経皮的動脈酸素飽和度)を測りながら、慎重に行われました。正直にうまくいくのかと思っていましたが、仮合わせ時には、血中酸素濃度が下がることなく、およそ20度から60度まで起こすことができ(写真C、D)、セラピストの評価も良かったので、1週間、仮使用することとなりました。お母さんもこのことにはビックリ!!!して「すごい、玲ちゃんが座れた!!!友達に連絡しよう」と喜んでいました。仮使用の結果、お母さんの評価も高く無事に使用することができたので、仕上げることとなりました。

今回のフォームチェアーは、玲ちゃんが暑がりということから、表面には多少でも通気が良くなるように、穴の大きいフィルタークッションと呼ばれる素材を使用しました。(写真E)フィルタークッションを使用することにより穴が大きい分、強度が弱くなることから、後方から底にかけては補強がわりに固めのスポンジを使用しています。この手の椅子はフレームがないため、スポンジを厚めにして、ある程度の補強をします。そのため、ものが大きくなってしまうことから移動する際の台車が必要になる場合があります。写真Fの台車の中に入っている土台はエペラン(発泡スチロール)製で、表面に滑り止めをつけることにより、ティルトリクライニング時に椅子が滑って起こる角度の変化を防止しています。椅子の生地は、玲ちゃんのためにお母さんが探してきたもので、ファスナーにより取り外し可能にしています。すごくシンプルでお部屋のイメージなどにあった生地なのですが、私のデジカメが古く、本当の色をお伝えできないのが残念です。
次回は、玲ちゃんとお母さんのお友達を紹介する予定です。

(写真掲載等、保護者の承諾済み)